スポ根家族

そんなわけで、クライマーの母だが、そもそもスポーツは嫌いな人だった。走るの遅い、泳げない、球技できない、元放送部、趣味は縫い物の人だ。
山登りはスポーツというより観光旅行の延長のようなもの。観光にしては何日も山ごもりなど、年を追うごとに激しさをますなとは思っていた。
ある日電話したら父がでた。母はどこ行ったのかと聞くと「水泳行ってる」とのこと。おどろいた。
膝を故障し、もう山には登れないかもと塞ぎこんでいたが、家で縫い物してても今までみた景色が浮かんできて寂しくなる。藁をもすがる思いで水泳をはじめた。意気込みは「水中ウォーキングでダイエットのおばちゃん」ではない。なので、クロールを習うコースに入ってみたら平日はウォーキングおばちゃんばかり。同じクラスは誰もいなくて、マンツーマンで特訓中らしい。
先生が若い男の人らしく、今までウォーキングのおばちゃん相手で持て余していた熱意を全力で注がれるらしい。「あの先生、私たちの方にはぜんぜんこなくなった」とウォーキングのおばちゃんに言われるらしい。ガラスの仮面みたいやな。「ヒロコ…おそろしい子…」とか言われてるんかな。
塞ぎこんでいたときは、CW-Xとかすすめても「高いからいい」と言う。「買うたるから」と言うても「…いい」と言うてたのに、今は自らCW-Xを購入し「なおった!」と言う。最近もっぱら会話は筋トレやストレッチの話だ。
もうしばらくスポ根は継続しといてほしいと思う。